ポップスが最高に輝いた夜
1985年、アメリカのポップミュージシャンたちが集結してレコーディングされたチャリティー楽曲『We Are The World』の制作過程を追った、Netflixのドキュメンタリー。
『We Are The World』は、当時深刻化していたエチオピアの飢餓を救おうと、ハリー・ベラフォンテが発案し、動き出したプロジェクト。
- 黒人を救う白人はいるが、黒人を救う黒人はいない。問題だ。私たちが仲間を飢餓から救わねば -
制作の中心人物だったライオネル・リッチーのインタビューを中心に、当時このプロジェクトに携わった制作サイドの人々、ブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス、シンディ・ローパーなどの参加ミュージシャンたちの証言に加え、当時のメイキングフィルムを織り込んで構成されています。
リリースからほぼ40年。何故、今…、と思いながら観たのだけれど、初めて知ることや、レコーディング現場のリアルな雰囲気などなど、なかなか見応えがありました。
例えば、結局は姿を表さなかったプリンスのためにソロパートが用意されていたこと。そのパートを急遽、ヒューイ・ルイスが担当したこと。そしてその部分は、マイケル・ジャクソンのソロパートの直後であり、もしプリンスが来ていれば、マイケル → プリンス という夢のリレーとなっていたかも…というエピソードは熱い。もし実現していれば…。
そしてレコーディングの最中、参加ミュージシャンたちが自然発生的に、発案者のハリー・ベラフォンテを讃えて、彼の代表曲『バナナ・ボート』を合唱する場面は鳥肌もの。
しかしまぁ、この作品でインタビューを受けていたミュージシャンたち、皆さんいい感じの格好良い爺さん婆さんになっていて、時の流れを感じる。
スモーキー・ロビンソンやディオンヌ・ワーウィックが元気にインタビューに登場していて驚いたけれど、よく考えたら当時40代のベテランは現在まだ80代。健在であって何の不思議もないのだな。
ポップミュージックが一番輝いていた時代の、最高の一夜。1980年代半ばのアメリカの音楽界隈の空気を懐かしく感じながら、自分自身のあの頃にも思いを馳せるのです。